SPring-8の高輝度な放射光を活用した
構造生物学研究環境の開発と整備を行っています

Multiモード

multiモード測定の場合の“Crystal size”はどのように設定すればよいですか?

こちらの11ページの下側に “Crystal size” について解説があります。
multiモードの場合、”Crystal size” は、露光点の間の最短距離というパラメータになります。ビームサイズ:10×10の場合、“Crystal size” を10に設定されると一番左のように隣接した箇所に露光する可能性があり、露光点間での放射線損傷の伝搬の影響が大きいですのでお勧めしておりません。トータルの結晶個数に応じて、中央か左側の設定を選択してください。

multiモード測定の”Total osc”はなぜ10°なのですか?

まず、multi測定の場合ループの投影面積が小さい方向では、X線の光軸中に複数の結晶が存在する可能性が高まりデータ処理が困難になる可能性があるので”Total osc”の値を大きくとることができないという背景があります。(そのためデータの完全性を確保するため、複数のデータをマージする必要があります。)しかし、LCP結晶構造解析では特にそうですが、multiモードで対象となるような結晶の場合には結晶のクオリティに保証はないので1結晶からできるだけ多くのデータを得たいという要請があります。(できるだけ少ない結晶から完全度を早期に上昇させたい)。またクラスタリングをするので、その個性を表す反射が多いほどクラスタリングが正確になります。これらの理由からできるだけ大きいWedgeサイズを選定する必要があると考えられます、 なぜ10°なのかということについては、ビームサイズが10~20um程度であれば”Total osc”が10°を超えるデータ収集をするとビームが結晶から外れる確率が高くなるためです。こちらの5ページに multiモードの測定スキームが図示されていますのでご参照ください。

multiモード測定をする場合、どれぐらいの結晶個数が最適でしょうか?

10°/crystalのデータ収集の場合、空間群にもよりますが、完全度100%をRedundancy=2で埋めるのであれば30~50個程度データが有れば良いということになります。ただ、実際には良いもの悪いものがありますので、測定すればするほど選択できる幅が広がるのと、シグナルを積算すれば分解能が向上します。まずトータルで100~200個程度のデータが撮れることを目安にすることをお勧めします。結晶の数やループでどの程度の量をすくうかに依存しますが30個くらいの結晶が1ループに乗っている場合には上記目標値を達成するのに5~6ループ(サンプルピン)程度となりますが、良い結晶が得られる確率などは事前には不明なため判断は難しいです。特に初めてのサンプルでは感覚がつかめるまではできるだけ多くの結晶を準備していただくことをお勧めいたします。