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Helicalモード

なぜhelicalモードの”Total osc” は360°以上(可能であれば720°)を推奨しているのですか?

単位体積あたりのRedundancyを増やすことで、良質体積が少ない場合にも完全なデータを得るための考え方です。結晶の質が不均一な場合は、途中のデータを削ってもデータセットがCompleteする可能性を高めます。 例えば良質体積が1/2の場合に180°でhelicalモード測定を行うと、収集できる角度は90° ぐらいとなり完全なデータにはならない場合があるからです。そのため”Total osc” は360~720° をお勧めしています。 逆に結晶のすべての部位が良質な場合は、Redundantに収集したデータがシグナル積算に寄与します。 720°を1回と、360° 1回の条件でそれぞれ同じDoseでデータ収集をすると下記のようになり、360°測定に比較して720°の測定では観測回数が2回になるため分解能は同じとなります。
1/2 * I(obs) x 2 = I(obs) (720deg)
1.0 * I(obs) x 1 = I(obs) (360deg)
参考:1/5の強度での5回測定と、1の強度での1回測定とでは同じデータが得られることを示す論文
なお、Helical測定では「ぶったぎりデータ処理」により多くの場合、前述の結晶質の悪い部位の排除ができます。
「ぶったぎりデータ処理」については こちらの4,5ページをご参照ください。

なぜhelicalモード測定の場合、データセットの初めと、終わりだけ回折点が薄い場合があるのですか?

現状の自動測定でのhelicalモードの基本的な考え方は、存在する結晶体積からはすべてデータを撮りきろうということで、結晶の端のクオリ ティが悪いとしても、そこには結晶がありデータ収集ができるためにその部分からも、あらかじめデータを撮っておくということになります。それは現状では結晶の部位ごとの良し悪しが、ラスタースキャンの時点で、機械的に正しく評価することはできないからです。そのため、結晶のクオリティが悪い結晶でもデータ収集を行って、データ処理の時点でそれらが不要ならば棄却するというコンセプトで測定と 解析を行っています。このような理由から、最初と最後の方のX線が当たっていない部分をリジェクトして解析にご利用していただくようにお 願いしています。またhelical測定の際、360°以上、可能であれば720°での測定をお勧めしているのはそのためです。具体的には「ぶった ぎり処理」により多くの場合、回折イメージの薄い部位の排除ができます。ひとつ上のQ/Aもご参考にしてください。

サンプルピンに複数の結晶が含まれる場合のhelicalモード (singleモード)測定はできますか?

helical モードの場合 “# of crystals/Loop” に含まれる結晶の個数を設定してください。ただし、こちらの12ページの右側の図のように結晶がマウントされている場合にのみ測定が可能です。ご注意ください。
なおsingle では “# of crystals/Loop” が2個以上になる場合は対応しておりません。
複数の結晶が、どのようにマウントされているかが不明な場合は、mixed(HITO)モードの利用もご検討ください。mixed(HITO)モードは、ラスタースキャンにより結晶の形状、位置関係を自動的に判断します。なおHITOモードの詳細については こちらの論文をご参照ください。

Helicalモード(Beam Size; 10x10[um], Hor. scan length; 600[um], total osc; 720[deg.])で測定したところ、時間の見積もりが実績値より長くかかった。

こちらの資料の10ページよりビームサイズごとの測定時間(実績値)をご確認いただけます。 表の Helical mode; Beam Size; 10x10[um], Hor. scan length; 600[um] を確認すると8.8[min]程度と分かりますが、"total osc." が 720deg.なのでその分、表よりは時間が伸びると思われます。
データセット測定にかかる時間はexp. time = 0.02sec, Osc. Width = 0.1deg., total osc. = 720deg. であれば
0.02 × 720 / 0.1 = 144 sec. となります。
表は 180deg で測定した場合の実績値なので 0.02 x 180 / 0.1 = 36 sec. となります。
今回の場合は、表中の Helical mode の表中の値に 108sec. (144 - 36 sec.) を加えてください。
Osc. Width = 0.1deg. -> 0.2deg に変更することにより測定時間を短縮される場合もあります。
(大きな格子を含む結晶の場合は、0.1degのままをお勧めいたします)
ビームサイズを10x10 -> 20x20に変更されるのも効果があります。